浅草・浅草寺「伝法院(本坊)」【重要文化財】
創建年
- 不明
- 推定:1777年(安永6年)
建築様式(造り)
- 寄棟造
- 一重
- 西面葺きおろし下屋
- 北面物置
- 廊下・庇付き
屋根の造り
- 鉄板葺
大きさ
- 横幅:22m
- 奥行:15.3m
総面積
- 7,748坪(25,568.4m2)
- 3,702坪(12,216.6m2)
重要文化財指定年月日
- 2015年7月8日(平成27年7月8日)
ご本尊
- 阿弥陀如来(阿弥陀三尊像)
浅草寺・伝法院の読み方
浅草寺の境内には、読みにくい名前の仏像やお堂が存在しておりますが、「伝法院」は「でんぼういん」と読みます。かつては「智楽院」とも呼ばれていました。
「伝法院」の名前の由来
伝法院の「伝法」とは、浅草寺中興の祖として知られる「第4世・宣存僧正」の坊号「伝法」が由来となっています。
伝法院は浅草寺の本坊ですので、宣存僧正の住まいでもありました。
浅草寺・伝法院の歴史と役割り
浅草寺の伝法院は、もともとは浅草寺の住職らが生活する場所としての「本坊」として造営されました。
本坊とは、主にその寺院のトップである住職が生活を営む「家屋」のことです。
つまり、これが「伝法院」の役割であり起源と言うことになりますが、伝法院内部の「客殿」では山内にある24つある子院の、住職の修行道場としての役割もあります。
「山家会(さんげえ)」と「霜月絵(しもづきえ)」の際には、この客殿にて「法華八講(ほっけはっこう)」の論議法要が営まれています。
法華八講とは、法華経の経典8巻を1巻からスタートして1巻ごとに8回に分けて講義する法会のことです。
もともと伝法院は、皇族や徳川家代々の将軍をもてなす場所とされていましたので、明治時代までは、いっさい非公開とされていました。
つまり、一般の人は立ち入ることが叶いませんでした。
しかし非公開であるのは、現在も同じなのです。
ただ、古来とは違うのは、桜が満開に花を咲かせる時期である「春」だけは公開されることがあるようです。
3月中頃~5月中頃までの約2カ月間の間、特別公開されるようですので、春頃に浅草寺の公式ホームページを確認してみましょう。
また、伝法院では「茶会」や「見学会」も、まれに開かれています。
浅草寺「伝法院」の建築的特徴
2015年(平成27年)伝法院の建物のうち、客殿、玄関、大書院、小書院、新書院の6棟が国の重要文化財に指定されています。
客殿、玄関、大書院、小書院、新書院、大台所の5棟は1777年(安永6年)の造営であり、大書院は1871年(明治4年)に造営されています。
「客殿」と「玄関」の雄大さや、「書院」や「台所」のデザイン、建物と庭園とが融合した時の美しさが認められたのです。
池に映る姿が美しい「大書院(おおじょいん)」は、寄棟造、浅瓦葺きの屋根を持ち、東に渡り廊下がついています。
それと1387年(至徳4年/室町時代)の刻銘が残る梵鐘もあります。
伝法院の御本尊「阿弥陀如来坐像」
伝法院の御本尊は「阿弥陀如来」です。
坐像姿の阿弥陀如来坐像は、材質が木造で客殿にまつられています。2016年(平成28年)に台東区の文化財に指定されました。
浅草寺・伝法院庭園【国指定名勝】
創建年
- 1624年~1644年(寛永年間/江戸時代)
庭園の造り
- 回遊式庭園/心字池
作者
- 小堀遠州(こぼりえんしゅう)
「伝法院」の庭は、大きな池の回りをぐるりと一周して見る、池泉回遊式の庭園です。
ただし、ただの池泉回遊式庭園ではなく、1足踏みしめるたびに景色が変化していくな、そんなように設計された庭園だと伝えられています。
この庭園は、寛永年間(1624~1644年)に江戸初期の大名茶人として知られる小堀遠州(こほりえんしゅう)が築いたものですが、江戸時代の元禄年間に輪王寺宮家の直轄庭園に定められ、以降、明治まで秘園として一般公開されることはありませんでした。
池の回りには灯篭や多宝塔、石棺などが置かれ、樹木が生い茂っています。
大書院の手前にある樹齢300年以上ものしだれ桜が、その見事な枝に花をつけるは、3月末ごろです。
池の中に浮かぶ「経が島(きょうがしま)」には、一字一石の写経がその土地に埋められており、聖域として扱われているため、立ち入り禁止になっています。
この「経が島」の周りは木々に囲まれているせいか、都会にいながら空気がおいしく感じられます。
この庭からは、浅草寺の五重塔と、東京スカイツリーの浅草2大ツリーを見ることができます。
浅草寺・伝法院「茶室・天祐庵」【東京都重宝】
創建年
- 1781年~1789年(天明年間)
- 1958年(昭和33年)10月、浅草寺婦人会寄進
- 1991年(平成3年)4月、改修復原工事完成
茶室の造り
- 表千家不審庵がモチーフ
発願者
- 牧野作兵衛(茶人)
庭の茶室である「天祐庵(てんゆうあん)」は、愛知の茶人、牧野作兵衛(まきのさくひょうえ)が、天明年間(1781~1789)に造られたもので、都内最古の茶室です。
表千家・千宗左(せんのそうさ)氏の邸内に建っていた「不審庵(ふしんあん)」を模造したものです。
その佇まいぶりは、オリジナル(不審庵)と寸分違わぬ造形を保持することから東京都重宝の指定を受けるほどです。
「不審庵」とは、茶の湯の祖人とも云われる「千利休」が安土桃山時代に建てたとされる茶室です。代々、千家に受け継がれる家宝の1つです。
天祐庵の見どころ「椿」
天祐庵の左には美しい色の椿が咲いていますが、庭園内には八重の椿屋、白ぶちの桃色の花の椿など、たくさんの種類の椿を見ることができます。
椿の花がその美しさを保ったままぽとりと水面に落ち、その色香に魅せられて池の鯉たちがよってくるのです。
浅草寺の庭園や茶室にに関しての詳細の記事はコチラから↓
浅草寺・伝法院「玄関」
創建年
- 1777年(安永6年)
建築様式(造り)
- 入母屋造
- 唐破風付き
- 西面及び南面庇付き
- 一重
屋根の造り
- 桟瓦葺
大きさ
- 横幅:20.2m
- 奥行:11.6m
重要文化財指定年月日
- 2015年7月8日(平成27年7月8日)
浅草寺・伝法院の玄関は、浅草寺の境内に現存する建造物の中でも、江戸時代から現在に至るまで伝来する数少ない貴重な建築物です。
したがって、要所々々に江戸時代の建築様式を見ることができます。
浅草寺伝法院・客殿「大玄関」
表門から入って直進するとやがて大きな唐破風屋根が据えられてた豪壮感あふれる建物が見えます。この建物は伝法院の客殿と呼ばれる建物であり、唐破風屋根の据えられた向拝は客殿の大玄関になります。
有名な歌舞伎「天衣紛上野初花(くもにまごううえのはつはな)」の舞台になった場所です。
「客殿」と付されていますが、かつては輪王寺宮一品法親王(輪王寺宮)の隠殿(いんでん/=別邸)としての役割も担っていました。
浅草寺・伝法院「大書院」
創建年
- 1902年(明治35年)
建築様式(造り)
- 寄棟造
- 東面葺きおろし下屋
- 一重
大きさ
- 桁行22.1m
- 梁間11.1m
屋根の造り
- 桟瓦葺
重要文化財指定年月日
- 2015年7月8日(平成27年7月8日)
伝法院・大書院の読み方
大書院は「おおじょいん」と読みます。
東西に渡り廊下が付いており、皇族や高家と言った国の根幹を担った方々が魅了された造りになっています。
浅草寺・伝法院「小書院」
創建年
- 1902年(明治35年)
建築様式(造り)
- 切妻造
- 一重
大きさ
- 横幅:12m
- 奥行:7.7m
屋根の造り
- 桟瓦葺
重要文化財指定年月日
- 2015年7月8日(平成27年7月8日)
「小書院」の読み方
小書院は「こじょいん」と読みます。
小書院は、主となる建家とは違う、別に造られた部屋のことです。
大抵の場合、小書院は小さい部屋にある小さな書院となります。
浅草寺・伝法院「新書院」【重要文化財】
創建年
- 1918年(大正7年)
大きさ
- 横幅:10.6m
- 奥行:9.5m
建築様式
- 入母屋造
- 四辺庇付き
屋根の造り
- 桟瓦葺
重要文化財指定年月日
- 2015年7月8日(平成27年7月8日)
伝法院「新書院」の読み方
新書院は「しんじょいん」と読みます。
新書院とは、新しい書院のことを言います。
浅草寺の境内では、大正年間の造りとあり比較的、近世に差し掛かり造営されたものです。
書院とは、主に基本的に来賓客をもてなすための「客室・客殿」として使用されます。
浅草寺・伝法院「台所」
創建年
- 1918年(大正7年)
大きさ
- 横幅:8.7m
- 奥行:30.3m
建築様式
- 入母屋造
- 一重
屋根の造り
- 桟瓦葺(鉄製)
重要文化財指定年月日
- 2015年7月8日(平成27年7月8日)
ここは、かつて浅草寺の本坊の台所として存在した場所です。
かつては、ここで浅草寺の住職や僧侶たちの食事の調理をしていた場所です。
浅草寺・伝法院「石棺」
大きさ
- 長さ2.5m
- 横幅1.2m
- 高さ75cm
材質
- 凝灰岩
伝法院の境内には、他にも見どころがあります。
そのうちの1つが、細長い「石」です。
この石は1869年(明治2年)に、浅草・本法寺「熊谷稲荷」から出土した古墳時代の石と云われています。
過去、浅草寺の付近・周辺に大豪族が存在したことを示す、学術的にも貴重な石と伝承されております。
扁額
伝法院・客殿には扁額がかかげられていますが、この扁額は輪王寺5世「公遵法親王」の筆による扁額です。1778年(安永7年)に浅草寺へ奉納されたものです。
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